金魂巻 [食]
私が三十路を迎えた年1984年に刊行された「金魂巻(キンコンカン)」は、日本がバブル経済に浮かれてひたすら消費を拡大していた時代に、渡辺和博&タラコプロダクションが生み出した大ベストセラーです。1980年代の31の人気職業を徹底的にリサーチし、アナウンサー、スタイリスト、コピーライター、イラストレーター、デザイナー、ミュージシャンなどの"横文字職業"にある人々のライフスタイルを鋭く観察し、それぞれにモデルとなる人物があって「○金のファッション・デザイナー」は、数年前からメディアの露出度が高いドン小西でした。
「一億総中流意識」と言われた当時、同じ職業の中に存在する階層差、所得格差のその典型像を図解し戯画化した、「○金」(マルキン)、「○ビ」(マルビ)は同年の第1回流行語大賞を受賞しました。バブル経済崩壊以降、景気の低迷が深刻化する時代に、数年前からマスメディアで使われている「勝ち組」「負け組み」のような無神経な表現ではなく、パロディ的に面白可笑しく解説された「金魂巻」は、バブルの落とし子的な著書だったのではないかと思います。
著者でイラストレイターの渡辺和博さんは2003年に肝臓癌の診断を受けて、自身の闘病生活を「病院観察記録」として面白可笑しく書かれた著書、「キン・コン・ガン!―ガンの告知を受けてぼくは初期化された」は2004年4月に刊行されて話題になりました。2007年2月6日、肝臓癌で逝去。享年56歳でした。渡辺さんの感性は1950年生まれながら晩年まで若く、「おたく世代」の前触れのような人だったそうで、 "ユルい若者"、"ユルキャラ"などの"ユルい"も、渡辺さんの造語だそうです。
「金魂巻」に登場する六本木の割烹「与太郎」は、当時"鯛めし"が美味しいと話題の店で、テイクアウトした鯛めしは翌日に鯛茶漬けにして食べたものでしたが、今日は名古屋の中区錦にある、伊勢湾産の天然鯛を使った鯛料理の料亭「鯛めし楼」を紹介します。
「鯛めし楼」のご主人鈴木晴視さんのお薦めは鯛のあら煮で、こちらの"鯛めし"は冊切りにして湯がいた鯛を、潰して湯煎しながら炒り田麩(でんぷ)にした手間をかけた逸品です。
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1984年2月から初夏にかけてFENで流れていたヒット曲、シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)の「ハイスクールはダンス・テリア(Girls Just Want to Have Fun)」と、「マネー・チェンジズ・エヴリシング゙(Money Changes Everything)」です。人生にはお金以前に、もっと大切なものがありますね!
伊勢湾の入り口、伊良子水道は波も荒く水流も早いところだそうですから、
そこで育った鯛は身が締まって美味しいことでしょう。
こういうお店で鯛づくし、堪りませんね。
ぜひ一度頂いてみたいです。
by ナツパパ (2010-10-29 08:38)
tateichi_m さん、
たしか、「エンスー」という単語を使い始めたのも渡辺和博さんだったと思います。輸入車を専門に載せる雑誌に、彼が書くヘタウマ漫画と共に車評を書いていていました。その内容が車の存在を妙に言い当てていました。あの頃は、車だけでなくファッションや食べ物に多くの人が散財していた時代でした。まさに、「Money changes everything」でした。 それだけ、インカムもあったからできたのですが、ちょっと使いすぎた、と今思うのは僕だけではないでしょう。愉しい時代?浮かれていた時代を過ごせたことは貴重ではありますが、それによって失ってしまったものは、tateichi_m さんがおっしゃるように、「大切なもの」が多くあったようです。tateichi_m さんのブログでは懐かしさを味わわせてらうだけでなく、深くものを考えさせてももらっています。ありがとうございます。
by Laurence (2010-10-29 13:08)
懐かしいですね!
この本、勿論読んだ口ですし
今も、本箱の隅に健在です・・・
渡辺さんも
当時、よくTVなんかにも登場されてて
結構、感心持って観てたように・・・・・
by miopapa (2010-10-29 21:00)
ナツパパさん、
名古屋は姉夫妻が長い事住んでいるので、
プライベートでも行くことが多く、東京とひと味違うセンスの店が多いです。
「鯛めし楼」は地元の財界人が主に商談などで利用する店なので、
料理も接客も満足のいく料亭です。
by tateichi_m (2010-10-30 00:58)
Laurenceさん、
渡辺和博さんの著書に、「エンスー養成講座」がありますね。時代を先取りする感性とユニークな表現力を持つ方でしたので、もっと面白い作品を生み出し活躍してほしかった人です。
あの頃はサラリーマンでしたので、交際費、タクシーチケットが使い放題で、ある意味金銭感覚が今とはかなり違っていましたね。
>深くものを考えさせてももらっています。
大企業の人事をサポートするお仕事をされる、Laurenceさんに云われると光栄です。
by tateichi_m (2010-10-30 01:10)
miopapaさん、
この本の視点と論点はシビアなものだったと感じますが、
そこをユニークな文章構成と図解で表現されていたので、
読んでいてけっこう笑えましたね。
by tateichi_m (2010-10-30 01:15)
tateichi_mさん、はじめまして。
いつも楽しく拝見しております。 「金魂巻」は私も愛読書でした。たまさか数日前に引っ張り出してきたところへこのブログ。思わずコメントをしてしまいました。適度に毒もあって笑える本でした。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
追記:続編で確か「金魂巻の謎」ていうのもありましたね。
by Gunclub (2010-10-30 09:25)
Gunclubさん、
初めまして。こちらこそ宜しくお願い致します。
まるきんを揶揄するような、爽やかな毒舌文とイラストも愉しく読めましたね。
「金魂巻の謎」はまだ読んでいませんが、面白そうですので読んでみます。
ご訪問とコメントをありがとうございます。
by tateichi_m (2010-10-30 23:58)
シンディローパー、ファッションもお洒落で可愛いですね^^vv
「ユルキャラ」って、若い人が作った言葉じゃなかったんですね。
by マイン (2010-10-31 07:58)
マインさん、
ユルキャラは、言葉は違えども昔からいました。
しまりのない奴。(笑い)
by tateichi_m (2010-10-31 22:15)